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数週前「復刻 建築夜話 日本近代建築の記憶」と題された書籍が日刊建設通信新聞社から私の手元に送られている。内容は60年代から70年代にかけ日本短波放送ので放送されたたくさんの建築家と様々な分野の著名人との対談をまとめたものである。この放送の提供が日刊建設通信新聞社であった。復刻された記事はそれの忠実な記録である。記事は17章、最初の章はアントニンレーモンドに丹下健三が聞く、というもの昭和35年4月の放送であったとのことだ。この中に吉村順三の章がある。吉村の章の巻頭に昭和41年の7月の建通新聞に掲載されたとの記録がある。先年、この件につき問い合わせをもらい応答した。私はその折にこうしたことが過去にあったことをはじめて知ったのであるが、その折にこの回についてだけ音声の記録があることも知った、昭和41年掲載という記録はラジオ放送がなされそののち新聞の記事としてまとめられたものであることをあらわす。ここに登場する建築家は先の三人のほかに内藤多仲、佐藤武夫、前川國男、村野藤吾、武基雄、吉田五十八、松田軍平、平田重雄、中村伝治、竹腰健造、渡邉節、園堂政嘉、山口文象、海老原一郎、藤島亥治郎等であり、丹下は聞き手としてそして話し手としても登場し前川も二度登場するなど内容も多様多彩、聞き手も伊藤ていじ村松貞次郎、田中孝などの建築関係者だけでなく有吉佐和子,曽野綾子などの文筆家、漫画家の近藤日出造、彫刻の朝倉響子と多彩、ちなみに先の吉村順三の回の聞き手は戸塚文子である。500ページの大部である。新聞の創刊60年の記念での出版で書店に並ぶものではないということだが、極めて興味深い内容である。吉村の回は昨年の問い合わせの段階でもちろん読んでいる。戸塚との対談ということもあり、風景、景観について特に東京の震災前の景観がいかに美しいものであったかを話している。この昭和41年は私が芸大の3年生、まさに吉村さんに教えを得ていた時間に当たる。残念だがこの放送が話題になった記憶が私には無いのである。巻頭で鈴木博之が話すようにこれは何よりの記録であろう。60周年の記念として出版を企画された日刊建設通信新聞社に敬意を心から払いお礼を述べたいと思う。
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by noz1969
| 2010-03-29 11:35
| 本・DVD
財団法人日立環境財団の刊行する「季刊環境研究」という出版物がある。156号が今、手元に届いた。大部の論文集の体裁である。ここに私が寄せた「オーエムソーラーシステムの展開」という記事が掲載されている。今号は「世界に伝える日本の環境取り組みの優れもの」という特集であり、手に取ったばかりだが内容は盛りだくさんにみえる。巻頭の小沢鋭仁環境大臣のコメントに始まり、まずこの半世紀における環境政策など様々な取り組みが総括されている。ここには小林光さんの環境白書の40年についての記事がある。其の次に優れものの「事例」として12件が取り上げられているが私が寄せた「オーエムソーラーシステムの展開」は其の半ばにある。事例のトップは別子銅山の環境対策についてである。これに始まりホンダのエンジン開発、シャープの太陽電池開発、などが並び12番目の自動車用リチウム電池の開発にいたる。ほぼ時系順の並びであろう。依頼があった折の話では「今回の企画は環境版 プロジェクトX を考えている。できれば英訳版も出したい」とのことであったと記憶するがオーエムソーラーの開発がこうした12事例のひとつとして認識されていることにあらためてこれからの任務の重さを思った。記事は次に先進各国の環境政策についての記載がある。全体で環境半世紀総覧としての意義のあるものとなっているようだ。まだ中身について詳しく触れることができないが興味をそそられる一冊である。広く手に取っていただきたいが、こうした書籍は一般の書店にあるものでは もちろんない。、発行元の日立環境財団に問い合わせると容易に入手可能なのであろうか。
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by noz1969
| 2010-03-26 11:58
| 日記
3月22日
『Harrer』社訪問 1994年設立の会社で元は大工の会社だったが、大工部門はすでに売却し、現在は代理店として建築から土木までシステムやアイデアを提供する会社である。断熱から接合部の作り方までバックアップし、現場対応まで行う。大学との共同プロジェクトは多数。セミナーも行っている。 SERPA verbinderはグラーツ国立大学との共同プロジェクトの接合金物である。 一番小さいものは階段の踏み板の接合から、一番大きなもので展示場のホールの部材の接合に使用される。 一番大きなものは280KNの強度。上下(長辺方向)だけでなく左右(短辺方向)の加重にも強い。試行錯誤を経て、最新の形は伝統的な仕口と金物をあわせた雄形と雌形の金物を引っ掛ける形である。施工が簡単で技術がなくても施工できること、50%まではまった時点で動かないため、施工の間違いがない、施工が早いことが特徴である。 30分で20mm燃えることが試験で確認されており、金物の両サイド20mmのあまりが取れる断面が必要。材はC24以上の強度を持っているもので、集成材はもちろんムク材でも使用できる。ヨーロッパで最も厳しいドイツの建材試験センターでも認証を受けている。金物は腐食、ゆっくり破壊することから鉄ではなく、アルミでできている。現在、オーストリアだけでなく、イタリア、スペイン、ロシア、カナダ(進行中)で使用されている。 ![]() 続いてIntelloの気密シートのプレゼンをバウマン氏より受ける。 パッシブハウスのポイントは 1.断熱 2.気密 3.窓 4.熱交換型換気扇 シュトットガルトの研究所が行った考察では21年12月 140mm厚の2×4壁(内+20度、外―10度として)で気密状態では0.3W/㎡・K、1mmの隙間があると1.44W/㎡・Kで1mmの隙間でも4.8倍の熱損失となる。 湿気の侵入(回避不可能) 3g/㎡/day 建材が含む水分 50g/㎡/day サイド(コンクリート基礎、れんがなど)30g/㎡/day 1mmの隙間があることで発生する気流による湿気侵入 800g/㎡/day ここでいかに気密をとるかが重要になる。インテロのシートは夏は湿気を通し、冬は湿気を通さない性質になることがポリフィルムとの違いである。 夏に冷房をする場合の逆結露の問題に対して有効なシートである。 ただ、幅が1.5mの規格しかなく、テープの量が増えることによる気密の問題、およびテープの価格が日本では高いため通常の気密シートと比較するとコストの問題があることは否めない。ただ、夏にかなり冷房をするような生活スタイルの場合は有効。 『ZARN FORFER社』見学 21年前に設立し、15年前からローエナジー、パッシブハウスをつくっている。設計から引渡しまでを業務範囲とする。 グラーツ国立大学との共同研究により壁の使用は石膏ボードか粘土ボード仕上げ、ケーブルを入れる通気層、合板、気密シート、柱、セルロースファイバーの仕様である。柱間には木か麻を原料にした断熱材かセルロースファイバーを入れ、現在はほとんどGWは使用しない。断熱層には配線を通さず、断熱層と配線を通す層が分離していることが特徴的である。床はセメントモルタル25~40mm、ポリプロピレンシート、断熱層、防音材、プロテクター、断熱材(木ベース)40mmである。断熱にはEPS、ロックウール、ハードボードで防音層があることが日本とは違っている。屋根は屋根材、外断熱、垂木、断熱、気密シート、ケーブルを入れる通気層24mm、石膏ボード1枚か2枚が標準的である。部材は窓の穴まであけられた状態まで工場で先に作られ、一番大きいもので12m×3mのパネルでトレイラートラックで運ばれる。 1970年代の住宅は170KWh/㎡・年に対してで社長の家でエネルギー消費は10KWh/㎡・年。(1ℓのオイル10KWのエネルギーとして換算できる。) パッシブハウスを作るうえで重要なポイントは ・方位と場所 ・断熱 ・気密 ・換気扇が入っていなければ空気交換(窓の開閉による)0.33回/h(3時間で1回) ・熱交換型換気扇 0.5回/h ・工事の精度 ・南側の開口部は大きくエネルギーを得て、北の開口部は小さくする・。 ・給湯はソーラーパネルによる 性能は 壁30cm断熱しU=0.07~0.10W/㎡・K 屋根46cm断熱でU=0.10~0.12W/㎡・K 基礎はU=0.07~0.1W/㎡・K 窓U=0.70~0.90W/㎡・K(ダブルで1.1、トリプルで0.5~0.9) 気密 max0.6(試験して30分間50Paの圧力をしてロスが0.6以下。隙間があったらそこから気流が入り厚が下がるので) セールスポイントは ・断熱の厚みは変えられる ・気密に気をつけている ・工場で部材をつくることによる精度の高さ ・コストパフォーマンス ・施工スピード ・パッシブハウスの証明 である。 補足として 土地を買ってパッシブハウスを建てると国からローンの金利補助が出る。 2200~2800ユーロ/㎡(1ユーロ130円として95万円~/坪) 一番小さいもので延べ床50㎡で一般的には130~190㎡ ![]() ![]() ![]() その後、改修現場の見学。セルロースファイバーは掃除機のような管を穴から入れ、いっぱいになると管の先端が360度回転し上下左右にセルローズを充填できる。 したがって一階の壁一枚の高さにひとつの穴で全体に断熱を吹き込むことができる。 ![]() ![]() 次にMURAUへ移動し、『KLH社』クロスラミナパネルの訪問。 いくつかのプロジェクトの説明を構造エンジニアのヨハネス氏より受ける。 1)Project Spottlgasse,Vienna 4階建て112世帯の集合住宅。床スラブ、間仕切りがKLHで5.5mのスパンをKLHの壁が支えている。重量をもたせた遮音床、間仕切りも遮音性能を保っている。オーストリアは遮音の規制がある。開口部の穴まで工場であけて、配管及び断熱は現場で行う。 2)Project Kuhlweg,Vienna 床スラブ、間仕切りがKLHで集成材の梁も使っている。床は32~40cmで遮音性が高い。建設費は1100ユーロ/㎡ 3)Project Hyttkammarer,Falum すべて木造。間仕切りはKLHダブルでスウェーデンは遮音の規制が厳しく、オーストリアのプロジェクトより重量をもった床となっている。48dB落とし、かつ周波数帯の規制もある。 KLHの施工はコンクリートスラブにL型金物およびアンカーを先付けし、固定するだけで簡単な施工である。今のところオーストリアでは5階建てまでしか木造は建てられず、それ以上は特別な許可が必要になる。イギリス、スウェーデンはそういった規制がない。 剛性は10階から15階まで大丈夫だろうと推測している。日本でもイタリア国立木材研究所が出資して7階建ての耐震実験も行った。今後、国交省の認定を取りたいと考えている。 素材としてはコンクリートと同じ価格だが、施工速度がコンクリートより速いことが特長である。素材は認証林からで200km以内の林からとった60年から100年の樹齢の木を使用している。製材所から加工工場に入ってくる時点でC24以上の材が90%以上であることが条件である。ただし加工後は交互にはるのでばらつきが多少あっても強いということで機械によるグレーディングは行っていない。国内で輸送可能なパネルの大きさの限界はW2.95m L16.5m。日本に入ってきた場合はコンテナの大きさに合わせて小さくなる。KLH社の外壁は湿式の外断熱工法で吹きつけ仕上げ、サッシは木製にアルミクラッドで木目のシートを外壁側に張って仕上げている。接着の工程は見学できなかったが、加工後のパネルの品質管理に疑問が残る。 藤村 ![]() ![]() ▲
by noz1969
| 2010-03-25 08:31
| オーストリア・スイス研修
3月21日
オーストリア・スイスパッシブハウス木造建築研修旅行 第1日目 前夜からのすさまじい暴風雨の中、5時半に自宅を出発する。自宅アパートはがたがた揺れていて、家を出るときは本当に飛行機は飛ぶのかと思ったが、待ち合わせの時間のころには雨風も納まり、定刻に出発。フランクフルトまで11時間45分、フランクフルトで3時間待ち、乗り継いで1時間ほどでグラーツに到着。日本との時差は8時間。今のところ東京より暖かい。団長は西方先生、副団長は金子建築工業の金子様。ツアーの参加者は設計事務所の方の他、材木やさんや工務店さん、リフォームの会社の方々で25名である。 藤村 ![]() フランクフルト空港 グラーツへ乗り継ぎゲート ▲
by noz1969
| 2010-03-24 06:30
| オーストリア・スイス研修
立川市庁舎がほぼ竣工する。新しい庁舎が動くのは5月の連休開けになる。コンペから市民とのワークショップを経て、長くこの仕事に関わった。新しい時代、市民が自ら様々に自治の経営を引き受ける時代の黎明を思うプロジェクトであった。現場はサイン、外構、植栽などがもうしばらく行われ、終了する。その後引越しである。もう仮囲いがはずされ外側の姿が現れている。西側沿道の桜がそれを彩るのもまもなくである。敷地にそう幅60メートルほどのその緑豊かなその幹線、それがこの建物の計画に大きな根拠を与えている。低層大平面、セットバックするテラス、屋上の庭園化。プレストレスコンクリート造、その現場での縦横の緊張による架構による構造形式、それら計画の初期にもくろんだ事柄はそれなりに実現したと思う。コンペであることが様々ないわば過剰ともいえる宿題をこの計画に内包させた。環境時代の宿題は建築のコストとの面倒な宿題でもあった。だが開口部のすべてを複層ガラスにするなどはそれなりにできているといえよう。夏季の外気の夜間導入による換気の試みが本当に上手く働くかはこれからの調整による。とりあえず一段落が近い。
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by noz1969
| 2010-03-20 21:41
| 立川市庁舎
愛知県立芸術大学の既存の撤去、改築の計画が動いている。なんとも残念だが最近の新しい大学キャンパスデザインは幼稚で耐えられないものが多いのではないかと感じる。一昨年だったか、前川さんのピラミッド校舎が壊されるということで訪れた学習院、周囲の建物は描割りのような幼稚なクラシシズムであったし、横浜線の窓から見える転居した青山学院のキャンパスも同様だ。聞けば少子化に伴う志願者数の減少は深刻であり、各大学は存亡を賭けキャンパスの改修を行っているらしい。「女の子に好かれるものに」ということが最大のデザインの根拠になっているとの指摘も残念だがうなずけるのだ。本当にそれでいいのだろうか。学生時代に考えることが真剣に行われたものの中にいることと、安直なポピュリズムにすり寄ったものの中で過ごすことのおおきな差を考えたい。吉村順三,奥村昭雄等によって計画がなされた愛知県立芸術大学キャンパスが確かに真剣に考えられたものであることは言うまでも無い。もちろん当時の条件により今日の性能を満たさないところが存在することはある。障碍者に対する配慮、空調設備などだ。またカリキュラムの変更などにより不足する建物もあるだろう。既存のキャンパスを尊重しながらそれらを注意深く付け加える、それが極めて創造的な建築家の作為であるはずではないか。
3月27日の土曜日愛知県立芸術大学の見学会が午後一時半からある。三沢浩さん、藤岡洋保さんの講演がある。現地を知らない多くの方々にとりとてもよい機会であると思う。そして特に改修の計画をすでにを始めている設計事務所のかたがたにとっては。 ついでながらこのキャンパス計画は当時SDの別冊として丁寧な解説書が編まれている。図書館で探されたい。 「吉村順三を見る・聴く」 2010年3月27日(土) 愛知県立芸術大学管理棟前集合 ■見学会とレクチャー(資料代 1000円) 13:30-15:00 見学会 15:30-17:00 三沢・藤岡氏による吉村作品の解説 ■懇親会(会費4000円) 18:00-20:00 懇親会(藤ヶ丘周辺) ■定員 50名 申込み順 ■問い合わせ 名古屋CDフォーラム 052-933-3101 ![]() ▲
by noz1969
| 2010-03-11 11:38
| 日記
オオイタビとはくわ科、ブロック塀などを覆い尽くす。つる性の植物。鹿児島、知覧の独特の光景がこれによるものだ。なんとなく葉の小さめ、密集する姿を寺の塀などで見ていたのだが先日都内のとあるところで集合住宅?のファサードがこれによって覆われているのを発見おどろいた。ここでは壁に密着するというより空中に向かって繁茂し大きく茂るところは一メートルほども突出しているように見える。葉も通常のものより大きいもののようでイチジク属というだけあり大き目のイチジクに似た実もなっていた。あまりの光景で巧まずして出現した パトリックブラン=ケ ブランリーであった。これだけの緑化が維持されているところを見ると室内の気候にかなりの効果をもたらしている可能性があろう。そうでなければ撤去されてふしぎはないのではないか。一度中を見たいものである。
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by noz1969
| 2010-03-08 14:46
| 日記
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