むさしのiタウン2期後半75人工目標

リンクしている「東村山プロジェクト」ブログ記事タイトル『速さは力』5月16日17時46分を見てほしい。今回のプロジェクトの際立って突出する特徴がここにある。まったく間仕切壁のない室内の施工状況を示す工事写真、こんな光景を見たことがあるだろうか。「オープンビルディング、S(サポート)、I(インフィル)システム」という考え方については以前からあちこちで言われてはいるが、これほど徹底して実現した例はないと思う。特に今回出現した木造での事例はRCでの 話とも大きくその成果が違う。
RCでは大抵外壁に面するところに何らかの艤装、たとえば断熱、外装、内装など、が発生する。サポート(一般にはスケルトンの略がSと考えられているらしいが)は性能のすべてを担わないのだ。
今回の木造ドミノにおいてはここまでで出現する「サポート」は基本的室内環境、室内気候を実現するための必要にして十分な性能を併せ持ちながら、上棟までの施工手間を一般の三分の一に近いところまで下げることにも成功している。

引用する。
「細かな柱や間仕切壁がないので、構造がシンプルな為5人工で2棟上棟できる。通常40坪の建物1棟で6~7人工かかるから、1/2~1/3程度の手間で済む。」また竣工までの大工の人工についても「むさしのiタウン2期後半75人工目標、キッチンや洗面や下駄箱や棚等の家具造作工事も含んでの手間。通常の40坪の建物の場合、140人工程度かかるから80人工にしても40%以上のダウン、、、、」

もちろん一度に二棟の施工、ということが条件であるのだが、それにしても、このトライアル、この結果は面白い。
外壁、隣戸間の壁のグリッドと戸内の間仕切壁の意味を二つ別種なものとしてグリッドを構成する、これがオランダ人、ハブラーキンのサポート、インフィルの主要なアイディアであったが、結果として「木造ドミノ」はハブラーキンの思想の正直な系統に属している。性能を伴うサポートはきっと長期にわたり室内を快適に保ち(その上オーエムという、パッシブ暖房換気システム付きだ)間仕切り設備等の更新が容易であることにより生活の姿の変化にもさまざまに対応し長期にわたり使い続けていくことを可能とするのではないか。何しろ、遠い将来のことかも知れぬが大きく様相を変える可能性の高い、キッチン、風呂、などの位置大きさなどの変更についてもなんら問題を発生させないのである。サポートの長寿命化が実現することがサステイナブルな建築の何よりの命題であることはいまさら言うまでも無い。建て替えのたびにコンクリートの基礎を壊し何の問題もない主要構造物を破壊するおろかさともったいなさから軽やかに脱出する方途を40坪という少し大きめで余裕のあることも幸いしてこの仕組みは確実に手に入れることになるのではないか。

夢は広がるが、たとえば公営住宅等でこの仕組みを試みようとする自治体が出てきてくれないだろうか。そうしたところではセミデタッチドタイプ(二棟連続タイプ)などが試せると面白いだろう。そうすれば施工する外壁が八分の一減ずることになるだけでなく温熱的にも外気に面する部分の四分の一の縮減が意味を持ってくる。今回の試みがもたらした成果に予想を超えたものがあることが明らかになって来ている。それらがこのプロジェクトの様々な条件について設計、材料、施工にかかわる人々が並列に参加し、技術、条件につき包むことなく議論、検討することによって手にしたものであり、結果として坪50万以下、をはじめとする「複雑な全体」と格闘したことにより現れたものであることを思う。「めんどくさい」、しかし意味のある試みだけが、人を考え続けさせる。そして考え続けることだけが面白い結果につながるのだ。
(野沢)
by noz1969 | 2007-05-29 16:24 | 東村山プロジェクト
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