ラルフ・アースキンの建築

ラルフ・アースキンの建築―人間性の追求が鹿島出版会より刊行された。 ピーター・コリーモァの著、翻訳の北尾 靖雅、 玉田 浩之 両氏の寄稿、藤本昌也、山下和正氏が以前都市住宅誌上でしたインタビュー記事が採録されている。日本語で読める初めてのアースキン紹介の本である。アースキンは大変面白い建築家だ。私もストックホルム大学などいくつか彼の仕事を見ている。先年高齢でなくなられたが、吉村順三さんと重なる20世紀のヒューマンな建築家では、と思っている。それにどこかユーモラスなアイデアを彼の作品から感じるのである。まだ手に取ったばかり、パラパラと見たところなのだが、本著作はハウジングを主に紹介し、参加のデザインについて話されているようである。80年代の藤本、山下氏とのインタビューが「参加」である。とても早い印象を受ける。
僕は寒地の建築、温熱とシェルターの工夫の面白さをアースキンから教えてもらったと考えている。ストックホルム大学の図書館などいくつかの彼の建築は既存の建築にへばりつくような形で作られている。その姿がいかにも独創のものでしかも説明可能なもの。テーゼとしてのモダニズム建築に熟考が生み出した独創のヒューマンなモダニズムがへばりつく、この面白さはほかには無い。バイカーの塀なども彼でなければ現われないものであろう。思索の幅を考えるのである。その説明にはもう一冊のアースキンの本が必要なのだろう。

鹿島出版会HP
by noz1969 | 2008-11-25 11:51 | 本・DVD
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