LとQということ



LとQといわれてもクイズか暗号のようです。これも最近のカタカナ、略字ばやりのひとつですが、この暗号、案外役に立つもののように思います。種を明かしますとLはLOADつまり負担,荷物のことであり、QはQUALITY,品質を意味する言葉、というわけです。
この二つにどんな関係にあるのでしょう。高いものはいい、これはひとつの見識でしょう。これは負担Lが大きいそして品質Qも高いというケース、ラグジュアリーホテルに泊まったとき、ブランドもののバッグを買ったときなどがこれにあたるのではないかと思います。しかしこれを繰り返すと財布Lはたまりません。支払いLをできるだけ少なくしかも品質Qの高いものを手に入れることが一番いいのはいうまでもありません。

そんな都合のいいことは可能でしょうか。ブランドのバッグについては残念ながらそのQの中心的な部分に個人の不思議な気分が挟まっているようで計ることが難しいのですが、住まいについては様々な物差しでそれを評価することができそうです。
地震に強い、室内の温度や湿度が快適である、間取りの変更が可能で長く使うことができる、維持管理がしやすい、安全である、などこれ等の品質Qがより少ない建設費Lで手に入り、しかも少ない維持費Lで使うことができることが住まい手の求めるものでしょう。
快適Qだがびっくりするほど月の電気代Lがかかるのではおちおち快適Qを続けることができません。そしてそうした負担Lの大きな生活はいうまでも無く地球環境にとっても多いな問題であるということでしょう。何しろ資材もエネルギーも私たちはこの地上にあるものだけを資源として消費するしかないのですから。
古い住宅を直して使う、30年で壊すところを生活に合わせ直しながら60年つかう、こうすると新築するという負担Lが一回分少なくてすみます。それどころかこれによって壊すという負担Lがなくなるわけですから本当はもっと負担Lを少なく抑えたことになるでしょう。断熱に優れた窓や壁とすると同じ快適さQを手に入れる負担Lが大きく減じるでしょう。また太陽熱を暖房や給湯に使う,雨水を使う、風力を使う、木を植えて日陰を作る、建物を地元の木で作るなど再生可能な資源、エネルギーを使うことも負担Lを最小限にとどめるとてもいい手法です。庇を長くして建物を雨から守り長く使える物とする、間取りの変更が容易な構造計画として要求に合わせしつらえを変え、建物そのものを長く使うことのできるものとして計画する、設備、配管など比較的寿命の短いものの更新が容易な計画とすること、などLをかけずにQを長く保ち続けることができる工夫はまだまだたくさんありそうです。
最近私は「木造ドミノ」という企画住宅の設計のかかわりました。この計画はまさにそうした試みであったといえそうです。ここでは木構造のすべてを外壁側だけとし骨組みが室内にないものとすることができたのです。室内には一本の柱があるだけです。基礎もきわめてシンプルなものになりました。こうすることによって室内のしつらえはまったく自由、水周りの変更も自在です。屋根には太陽熱による換気と暖房の仕組みをつけました。
性能Qを主に担う外壁構造部分、自然エネルギーによる室内気候の仕組みにはしっかりお金をかけその他の間仕切りなどは取替え可能にする、ここで試みたことは実は建てるときの仕事の量を劇的に効率化し同じ品質Qのものをより少ない人件費で作ることにもなりました。100年使う建築、しつらえを変えながら長く使い続ける、快適をより負担の少ない方法で手に入れる、こうしたライフスタイルを私たちが新しい時代のスタンダードにすること、それが地球の環境が私たち一人一人の宿題となっている今、求められているのではないかと思うのです。負担Lとは実はCO2など温暖化ガスのことでもあるのですから。


経済産業省 資源エネルギー庁委託事業 ロ・ハウス→
http://www.eccj.or.jp/lohouse/index.html
by noz1969 | 2001-01-01 01:30 | ロ・ハウス コラム 9月号
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