一般社団法人「住宅遺産トラスト」の発足

「園田高弘邸の継承と活用を考える会」が園田高弘さんのお宅をお借りして 
「音楽と建築の響きあう集い」という名の音楽を聴き建築についての話をする
「集い」を開いてきた。開催された「集い」はこの間に十数回を数える。毎回多く
の人の参加があった。「集い」の目的は住宅という比較的継承の難しいものを
何とか次の時代、世代にまで伝えていきたい、その方途を探りたい、というもの
であった。敷地内での保全のほか、移築の可能性も考え動きもした。 そうした
経緯のなか、昨冬この住宅を含む三つの住宅を紹介する展覧会を開くに至
った。 ここまで吉村順三が1955年に設計した この住宅の新たなすまい手
を捜す活動を始めて4年半を越す長い歳月が経過したことになる。
展覧会は多くの人が興味を持ってくださった。このブログの読者の方にも来てく
ださった方が多くおられるだろう。特にこのことが日本経済新聞の文化 欄に掲
載されたことは実に大きな反響となった。会場を訪れる人の数が一気にに増え
た。結果 幸運にもわれわれの所期の目論見はついに実現することと成った。
園田邸は稀有なことに今後も この地に今の姿のまま残されることとなったの
である。大きな楠の木のそびえる豊かな住宅環境もここに今のまま維持される
こととなった。買い取ることを決断していた だいたのは個人の方である。私達は
こうしたことが起きたことに実は驚いている。それほど難しい道筋であった。

しかしこのことが私達をきわめて勇気付けている。展覧会の後、継承を急ぎ考え
なくてはならない質の高い住宅についての相談がいくつか舞い込んできてもい
る。結果、私達はいそぎ一般社団法人「住宅遺産トラスト」設立をもくろむこと
となった。こうした取り組みはわれわれの社会が実に待つものであったと 考え
ている。そしてこのプロジェクトが取り扱うことになるであろう住宅はその継承と
活用を実現するにあたっては個々に異なる事情そして様々な困難を抱えるもの
であり、決して全てが一件落着、とは行かないものであろうことを覚悟している。
しかし建築と言うそれが建てられた時代ごとにそこに関った人々、クライアント、
建築家、大工などの様々な職業人などの営為を実物のまま存在させること、
その時代のもつ力を存在させることであるとすればそ の意義はとても大きい
ものと思う。失われた後にそれを再び作り出すことは出来ない。新たに作るこ
との絶望的な困難は最近の復元建築の薄っぺらさが証明してい る。

「住宅遺産トラスト」は近代の住宅の継承と活用が社会のなかできわめて普通
のなんでもないことこととなるよう、地道な活動を展開していくことを約 束したい。

高ぶる気持ちは三人の先達の名前を思い出させる。オクタビア・ヒル、ロバー
ト・ハンター、ハードウィック・ローンズリーである。今日の英国の継承 し活
用される景観の端緒1895年「ナショナルトラスト」の発足の口火を切った
方々のことである。
by noz1969 | 2013-03-29 19:00 | 日記
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