フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング 2011年6月7日版

フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング
2011年6月7日版の翻訳記事を転載します。

第一面

ドイツの単独行動に不機嫌なヨーロッパ

フランスのエネルギー大臣がEU緊急会議を要請

F.A.Z. ベルリン/ブリュッセル6月6日
ドイツ連邦政府と連立議員団は2022年までに段階的に原子力エネルギーから撤退するための法案を出発させ、ノーベルト・レットゲン環境大臣(CDU)は、これによりここ数十年間続いた紛争は社会的コンセンサスのうちに収束したと述べた。しかしヨーロッパの他の国々ではこの月曜日、ドイツの「単独行動」は他の国々のエネルギー安定供給を危険に晒すものだと懸念する声が顕著になっている。フランスのベソン・エネルギー相は月曜日、EU加盟国エネルギー相の緊急会議を要請し、またテレビ番組において、EUエネルギー委員のエッティンガー氏に月曜日中にもその会議を準備するよう依頼するつもりだと述べた。彼によると、ドイツの原子力発電所の閉鎖は全ヨーロッパに影響を及ぼすにもかかわらず、ドイツ連邦政府はヨーロッパのパートナー国との意見調整を十分に行っていない。
 一方エッテインガー委員のスポークスマンは月曜日にブリュッセルで、EU委員会はベソン氏からまだ何も正式な文書を受け取っていないが、いずれにしても、同氏が要請している特別会議を招集できるのは、彼ではなく評議会議長だけだと述べた。委員会の指摘するところによれば、ベソン氏はその前の金曜日にルクセンブルクのエネルギー閣僚会議でこの主題について意見を述べる機会が与えられていたのに、顔も出さなかったという。ライバッハ所在の欧州電気ガス規制局グループ(ERGEG: EU加盟諸国のエネルギー監督機関から成る)は、ドイツ政府が自分たちときちんと意見調整を行わなかったことについて、多くのヨーロッパの国々が機嫌を損ねていることを認めた。その説明によると、ドイツはこれまで需要ピーク時には多くのEU諸国のために電力供給の緩衝役を務めてきている。したがって、ドイツの原子炉が停止すれば、真夏や冬の寒冷期に停電が起きる可能性が増大するという。さらに、ドイツの脱原発は近隣国を巻き込んだ電力価格の上昇に繋がるとされる。脱原発の動きに関してはパイオニア的な役割を演じているオーストリアにおいてさえ、ドイツの政策転換が及ぼす将来の電力供給への影響ついて懸念を表明する声が高くなっている。

第二面

模範的と評価するのは緑の党のみ

フランスはその需要のピーク時にドイツの電力に頼ることはもはやできないと覚悟を決めた。国内の政治に関してもサルコジ政権への圧力が高まっている。

ミカエラ・ヴィーゲル

パリ6月6日
ドイツの脱原発に対してフランスは神経質な反応を示している。原子力エネルギーへのフランス人の無条件ともいえる支持が崩れ始めている一方で、仏政府は今回のドイツの単独行動を自分たちへの挑戦と見ている。エネルギー大臣のエリック・ベソン氏は月曜日、ドイツの決定がヨーロッパのエネルギー政策に及ぼす影響について論議するため、EUエネルギー閣僚緊急会議を開催するよう求めた。彼はLCIテレビに出演して、月曜日中にエネルギー担当のEU委員ギュンター・エッティンガー氏にその会議の準備を依頼するつもりだと語った。連邦政府がこれまでヨーロッパの他の国々と意見調整を図っていないことを彼は遺憾に思っている。ドイツ原発の閉鎖は欧州全体に影響を及ぼすことになるという。
フランスはこの夏のエネルギー供給が逼迫する可能性に備えている。同国のエネルギー業界はここ数年ずっと、外国への拡大のために発電所と送電網を近代化する業務を引き延ばし続けてきたため、過去において例えばブルターニュやプロヴァンスの一部の地域で幾度も電力不足に見舞われており、そのような逼迫時には電力をドイツから輸入していた。しかしドイツの原子力発電所が閉鎖されれば、今後はそれができなくなってしまう。昨年フランスがドイツから輸入した電力は16.1テラワットアワー、輸出電力量は9.4テラワットアワーだった。
さらにドイツの脱原発でフランスの国内政治にも圧力がかかっている。フランスでもこれまでに原子力エネルギーへの依存度を減らすべきとの声が多数派を占めるようになった。国内消費電力の4分の3は同国の58基の原子炉で賄われている。世論調査会社Ifopが行った最新のアンケート調査では、最近の福島原発事故を受けて、国民の62パーセントが今後25年ないし30年以内に脱原発を実現すべきと考えており、15%はそれよりも早期の脱原発を望んでいる。エネルギーの問題は2012年の春に行われる大統領選に向けての最重要テーマの一つとなるだろう。サルコジ大統領は「気候に優しく」かつ最高レベルの安全基準を満たす原子力産業の強化に肩入れする旨を明確にしている。彼は福島の災害ののち東京に駆けつけた最初の国家元首で、ドーヴィルでのG8サミットの機会を利用して原子力発電所の安全義務を訴えた。しかしサルコジ大統領はドイツ政策に追随する他のヨーロッパの国が出てくることを恐れている。彼が国営の原子力企業アレヴァのCEOアンヌ・ロベルジョンにドイツ政府の「単独決断」を公式に批判させたのもそのためである。ドイツはEUの温暖化防止目標の達成を妨害していると彼女は言う。「ドイツは原子力施設で発電している国々から電力を輸入しなければならなくなる。これがまともな論理と言えるだろうか。」とロヴェルジョン女史は「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」で疑問を呈している。
それに対し環境政党の「ユーロップ・エコロジー・緑の党」はドイツの脱原発を模範と見なしており、先週末に同党は反原発派のセシル・デュフロを正式な党首に定めた(訳注: それまでは仮の全国書記)。デュフロ女史は原子力に関する国民投票を求めるとともに、脱原発を社会党との連立の条件にしたいと考えている。しかしヂュフロ女史は予備選には出ない。大統領選挙の候補者として有力視されているのは、前予審判事のエヴァ・ジョリとTV司会者の二コラ・ウロである。ウロ氏は自分の設立した基金のために国営電力企業EDFから財政援助を得てきたが、福島の事故を機に原子力エネルギーとは最終的に手を切ることに決めたという。
一方社会党内ではエネルギー政策に関する姿勢は分かれている。党首のマルティーヌ・オブリーは大統領選に向けた党計画の発表の席で、「個人的には」脱原発を自党のプログラムに組み込みたいと述べたが、それについてはこれまで異論が出ているという。社会党の予備選に出馬する前党首フランソワ・オランドは、フランスのエネルギー政策の独立性を保障するものとして原子力プログラム擁護の立場をとっている。彼は「ユーロップ・エコロジー・緑の党」から新戦略を押し付けられることを拒否した。リオネル・ジョスパン首相(1998-2002)の下での最近の左派政府は、ベルリンで社会党・緑の党の連立内閣が脱原発を協議していたときでさえ、原子力エネルギーに関するコンセンサスを議論のテーマとして取り上げたことはなかった。緑の党の党首デュフロは、現左派陣営の力関係が自党に有利に作用して脱原発を貫くことができるのではないかと見ている。「我々の強みは、支持者がどういう背景を持つかではなく、彼らが何を目指すかを重視している点にある。」

経済欄

エネルギー機関がドイツの単独行動を批判

IEAは他の欧州諸国への影響について警告/ガスの重要な役割を予想

ロンドン6月6日
ベルリンの連邦内閣はこの月曜日に急速な原発の実施に踏み切ったが、国際エネルギー機関(IEA)はドイツの単独行動による全ヨーロッパへの影響について警鐘を鳴らしている。「一つの国がヨーロッパ全体のエネルギー保障を妨害する恐れがある。」IEAの田中伸男事務局長はロンドンで記者を前にこう語った。彼の主張によれば、発電のために今後も原子力を使用するか否かは、個々の加盟国のレベルではなくEUの枠組みの中で決定されるべきである。
先進工業国の中央研究機関であるIEAはまた、ヨーロッパの経済大国が原子力に背を向ければ、EUの温暖化防止目標の達成が困難になると懸念している。原子力を放棄するとなれば、電力供給に支障が生じることのないようガス、石炭等の化石エネルギー源の使用量が増えることが予想される。
福島原発の災害の後でも、自ら日本人である田中氏は、二酸化炭素の発生を最低レベルに抑えることができ従って大気温暖化防止に寄与する原子力エネルギーは不可欠であると考えている。「気候に害を与えない経済成長を達成する上で、原子力は今後も重要な役割を担うことになる」と田中氏は言う。しかしIEAは同時に何年も前から、再生エネルギーへの国家支援、石油・ガスへの多額の助成金の廃止、エネルギー有効使用等の必要性を説いてきた。
原子力を使わないとなれば、ドイツは当面ガスの輸入量を増やさなければならないはずだとIEAのチーフ・エコノミストのファティ・ビロル氏は言う。「われわれは今、ガスの黄金期を迎えようとしているのか。」これはグローバルなガス市場を目指すエネルギー科学者たちが月曜日に発表した分析結果である。新しい大きなガス田が開発されているため、将来入手できるガスの量は石油よりも多く、燃やしても石油や石炭に比べて気候を害する度合いが少ない。何よりも今後の数十年間にさらに大量のエネルギー消費が見込まれる中国やインドなどの新興国では、これまでに比べて格段にガスへの依存度が増すだろう。
IEAの見積もりでは2035年までにガスの使用量は50%以上増加すると予想され、これはグローバルなエネルギー消費量の4分の1強に当たる。追加需要の約40%は従来とは異なるガス埋蔵源の開発強化によりカバーできるだろう。特に米国では既に今日の時点で、粘板岩の塊に含まれるガスの採掘がエネルギー市場に革命をもたらしつつある。
しかし研究者たちは、これまでと異なる類のガス採掘において環境保護が十分考慮されてない点を問題視している。「エネルギー産業がガスの黄金期の到来を待ち望むのであれば、彼らは同時に黄金の安全基準を設けなければならない」とビロル氏。でなければ、新規のガス埋蔵地の開発は社会から受け入れられないであろう。技術面で費用のかかる採掘方法は議論の余地があるが、その理由は、粘板岩中のガスを採掘する場合に水と化学物質の大量の混合物を用いて岩層を爆破しなければならないためである。ヨーロッパにおいては、特にポーランドでこれまでにない新しいタイプのガス埋蔵地が存在すると推定されている。
by noz1969 | 2011-06-13 11:27 | 日記
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