ドイツの脱原発決断について当地ドイツ、と隣地フランスの新聞記事の翻訳が手に入りました。転載します
ドイツ Die Zeit(ディ・ツァイト)紙 2011年6月6日 エネルギー変換: 内閣は2022年以前の脱原発を決定。 原子力発電所の閉鎖と再生エネルギーの支援 内閣は脱原発を決定、既に7月の時点でそのための法が発効する。 連邦内閣はキリスト教民主連合(CDU)/キリスト教社会連合(CSU)/自由民主党(FDP)連立内閣エネルギー変換のための法案を可決した。その核となるのは原子力法で、2021/22年までにすべての原子力発電所が段階的に停止されることを確定している。それに代わって、再生可能エネルギーの大々的な振興を図る。 さらにそれに絡んで、送電網の迅速な整備が必要となる。中でも、北部で発電される風力による電力を南ドイツに送るという課題に取り組まねばならない。南部では最終的な原発までの10年間に原発が閉鎖されることになっている。加えて、市民にもエネルギー節約を促し、そのために建築物省エネ対策を支援していく。 即座に停止される原発に続き、その後も運転を続ける9基の原発は計画に従って下記の通りに閉鎖される。 2015年 グラフェンラインフェルド(バイエルン) 2017年 グンドゥレミンゲンB(バイエルン) 2019年 フィリップスブルクII(バーデン・ヴュルテンベルク) 2021年 グローンデ(ニーダーザクセン)、ブロクドルフ(シュレスヴィヒ・ホ ルシュタイン)、グンドレミンゲンC(バイエルン) 最後の原発として、2022年にイザール(バイエルン)、ネッカーヴェストハイム(バーデン・ヴュルテンベルク)、エムズラント(ニーダーザクセン)が停止される。 連邦政府のノヴェルト・レットゲン環境大臣によれば、加速化された脱原発はドイツの経済・社会発展のマイルストーンであり、初めて包括的なエネルギー構想が打ち出されたことになる。CDU所属の同大臣は内閣決定の後、今回の法改正に付いて「我々は社会的なパイオニア・プロジェクトを開始する」と語った。 連邦政府のペーター・ラムザウアー建設大臣は、脱原発を受けて今までより格段にエネルギー節約が必要になると述べた。同氏の説明によると、「一次エネルギーの70%は交通と建築物の分野で消費される。」従ってそこでのエネルギー節約の可能性も非常に大きく、しかもそれによって地球温暖化の犯人である二酸化炭素の排出を抑えることが可能だという。そのため2012年からは、省エネ型建築物への改良を奨励する目的で15億ユーロを準備しているとラムザウアー氏は付け加えた。 一方社会民主党(SPD)は新しい原子力法に賛成する用意がある旨を示している。同党の議員団長トーマス・オッペルマンはARD(訳注:ドイツの放送局)で、「原子力法が迅速かつ元の戻ることの無い脱原発に繋がるのであれば、それに同意してもよい」と語った。そのための条件として同党が非常に重視しているのは、2011年から2022年にかけて原発を「まとめて閉鎖」するのではなく、停止が段階的に行われることである。また、脱原発は再生エネルギーの速やかな開発と軌を合わせて進められなければならない。 午後には院内会派は特別会議でエネルギー変換に向けての政府計画に取り組んだ。今日から火曜日にかけて、連邦政府と州政府の経済大臣がシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州のプレンでエネルギー変換について会談することになっている。送電網拡張整備の管轄官庁の新設に関して、連邦政府と州政府との間の対立が予想される。連邦政府は拡張事業をより迅速に進めるため、より大きな権限を持つことを望んでいる。 エネルギー会社は段階的閉鎖に懐疑的 エネルギー会社は現段階では、残る9基の原発について計画されている段階的な閉鎖が法的に問題ないかどうか疑わしいと見ている。運転期間が短縮されることにより、本来予定していた電力量の生産はほとんど不可能となるという声が、エネルギー会社の諸サークルから聞こえてくる。ここで問題になるのは、許可されている電力量を全原発においてそれぞれの停止時期までに発電できるかどうかという点である。 E.on、RWE、EnBW、ヴァッテンファルの公式な見解は今日の閣議が終るのを待って発表されるが、契約によってこれまで保証されていた電力量を生産できないとなれば、彼らが多額の補償を要求する可能性があり、既に法律家によって財産損害の検査が行われている。政府側は脱原発のやり方・方法は合法的と見なしている。 エネルギー会社のサークルからの批判の対象は、連邦州への圧力を意図してアンゲラ・メルケル首相が発表した2022年までの段階的閉鎖計画である。間もなく停止される8基の原発が発電することになっていた電力量は、残る9基の原子炉に転移させ、そこで生産してよいはずだというのである。 仮に停止の時期まで原子炉が望み通りの電力を生産できるとしても、それらはいずれ閉鎖されねばならず、これは財産権の侵害と見なされうる。政府の見解は電力会社のそれとは異なり、2002年の原子力法で確定されたすべての電力量は、9基の原子炉に移される分も含めて、閉鎖時期までに消費されると予測している。 観測筋によると、政府のエネルギー変換策は電力消費者にとっての価格高騰を意味する。消費者保護団体はこのような結果を和らげるための方策を求めている。「甚大な価格高騰が起きた場合、特に低所得者層が大きな影響を被る。この点について立法府は再調整すべきだ」と消費者センター連邦同盟のエネルギー専門家ホルガー・クラヴィンケル氏はハンデルスブラット紙(訳注:ドイツ日刊経済新聞)に語った。彼が考えているのは特別な電力社会税などではなく、それよりも、例えばハーツVI(訳注:ドイツ政府の生活保護プログラム)の支給額を増やすことを勧めている。 フランス ラ・リベラシオン 2011年6月6日 ベルリン(AFP)-ドイツ政府は月曜日、同国を核に背を向ける最初の経済大国とする法案を可決した。これは経済大臣フィリップ・レスラー氏から発表された。 同大臣は記者会見の席で、ドイツのすべての原子力発電所は2022年までに閉鎖されると述べた。 アンゲラ・メルケル首相のチームは特別閣僚会議でドイツが前例の無い挑戦に立ち向かうための戦略を定めた。その原則は既に先週の時点で与党連立内閣のメンバーにより策定されていた。 17基の原発中8基はただちに停止されるが、他の9基は2015年から2022年までかけて段階的に閉鎖され、それによってドイツは総発電量の22%を失うことになる。その分を補うためにドイツ政府は今後具体的には北海沿岸の風力発電装置の増設とガス・石炭発電の建設に注力し、エネルギーの高効率化を促進する。 ベルリンの政府は原子力エネルギーを放棄するための費用をこれまで慎重に計算しているが、専門家は900億ユーロから2000億ユーロの間と見積もっており、納税者と電力消費者と電力生産者が共同でこの額を負担することになる。 原子力エネルギーを放棄することにより、ドイツは短期的には工業の競争力が損なわれることを覚悟している一方で、中期的観点に立てば「緑」の技術の市場開拓において先駆者となれると考えている。 しかしこの決定は、より多くの公害をもたらす発電所に頼らざるを得ないことから、各国の温室効果ガスを削減するという目標を危険にさらすパラドックスを伴う。
by noz1969
| 2011-06-08 15:24
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