「森のめぐみ」

私が粗忽であったからである。「森のめぐみ」を知らなかった。奥付によると1975年に出版されている。ちくま少年図書館というシリーズの28巻。思えば、ちくまは今も少年層への出版に熱心な出版社だ。35年前、私がだいたい30歳前後のころ、著者は山本学治、私の大学時代の先生である。学治は77年に亡くなった。その2年前の出版だ。これが最後の著作であろう。それを知らないのだからいかにそのころの私がぼーっとしていたかが知れる。知らないのであるからもちろん手元にこの本が、あるわけはなくアマゾンの古書のルートで入手し30年後れてやっと読むこととなった。
きっかけは三井所さんとの雑談であった。湯豆腐の桶、その贅沢な体験が三井所さんにこの本を思い出させたと言うのだ。案の定 本書には嵐山の吉兆(であろう)での湯豆腐体験のこととこの湯豆腐の桶のカラー写真があった。
内容は日本の木造建築の特長から様々な木製品に至り、われわれと森のかかわりについてその特性を説くもの。少年には少し難しいのではないか、と思うほどの内容の濃い、学治らしい熱いメッセージにあふれたものであり、まさに今読み直すに時機を得たものであった。
私が学生であったころの学治を思い出しながら読んだ。
ちょっとしたきっかけ、雑談といっていい会話から本を手にすることが多くあった青年期のことと同じことを久しぶりにした、と言う感慨を持った。人と会話を楽しむことの意味と刺激を再確認した小さな「事件」であった。
by noz1969 | 2011-01-29 19:15 | 日記
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