オーストリア・スイスパッシブハウス木造建築研修旅行 第2日目

3月22日
『Harrer』社訪問
1994年設立の会社で元は大工の会社だったが、大工部門はすでに売却し、現在は代理店として建築から土木までシステムやアイデアを提供する会社である。断熱から接合部の作り方までバックアップし、現場対応まで行う。大学との共同プロジェクトは多数。セミナーも行っている。
SERPA verbinderはグラーツ国立大学との共同プロジェクトの接合金物である。
一番小さいものは階段の踏み板の接合から、一番大きなもので展示場のホールの部材の接合に使用される。
一番大きなものは280KNの強度。上下(長辺方向)だけでなく左右(短辺方向)の加重にも強い。試行錯誤を経て、最新の形は伝統的な仕口と金物をあわせた雄形と雌形の金物を引っ掛ける形である。施工が簡単で技術がなくても施工できること、50%まではまった時点で動かないため、施工の間違いがない、施工が早いことが特徴である。
30分で20mm燃えることが試験で確認されており、金物の両サイド20mmのあまりが取れる断面が必要。材はC24以上の強度を持っているもので、集成材はもちろんムク材でも使用できる。ヨーロッパで最も厳しいドイツの建材試験センターでも認証を受けている。金物は腐食、ゆっくり破壊することから鉄ではなく、アルミでできている。現在、オーストリアだけでなく、イタリア、スペイン、ロシア、カナダ(進行中)で使用されている。
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続いてIntelloの気密シートのプレゼンをバウマン氏より受ける。
パッシブハウスのポイントは
1.断熱
2.気密
3.窓
4.熱交換型換気扇

シュトットガルトの研究所が行った考察では21年12月 140mm厚の2×4壁(内+20度、外―10度として)で気密状態では0.3W/㎡・K、1mmの隙間があると1.44W/㎡・Kで1mmの隙間でも4.8倍の熱損失となる。
湿気の侵入(回避不可能) 3g/㎡/day
建材が含む水分 50g/㎡/day
サイド(コンクリート基礎、れんがなど)30g/㎡/day
1mmの隙間があることで発生する気流による湿気侵入 800g/㎡/day

ここでいかに気密をとるかが重要になる。インテロのシートは夏は湿気を通し、冬は湿気を通さない性質になることがポリフィルムとの違いである。
夏に冷房をする場合の逆結露の問題に対して有効なシートである。
ただ、幅が1.5mの規格しかなく、テープの量が増えることによる気密の問題、およびテープの価格が日本では高いため通常の気密シートと比較するとコストの問題があることは否めない。ただ、夏にかなり冷房をするような生活スタイルの場合は有効。

『ZARN FORFER社』見学
21年前に設立し、15年前からローエナジー、パッシブハウスをつくっている。設計から引渡しまでを業務範囲とする。
グラーツ国立大学との共同研究により壁の使用は石膏ボードか粘土ボード仕上げ、ケーブルを入れる通気層、合板、気密シート、柱、セルロースファイバーの仕様である。柱間には木か麻を原料にした断熱材かセルロースファイバーを入れ、現在はほとんどGWは使用しない。断熱層には配線を通さず、断熱層と配線を通す層が分離していることが特徴的である。床はセメントモルタル25~40mm、ポリプロピレンシート、断熱層、防音材、プロテクター、断熱材(木ベース)40mmである。断熱にはEPS、ロックウール、ハードボードで防音層があることが日本とは違っている。屋根は屋根材、外断熱、垂木、断熱、気密シート、ケーブルを入れる通気層24mm、石膏ボード1枚か2枚が標準的である。部材は窓の穴まであけられた状態まで工場で先に作られ、一番大きいもので12m×3mのパネルでトレイラートラックで運ばれる。
1970年代の住宅は170KWh/㎡・年に対してで社長の家でエネルギー消費は10KWh/㎡・年。(1ℓのオイル10KWのエネルギーとして換算できる。)
パッシブハウスを作るうえで重要なポイントは
・方位と場所
・断熱
・気密
・換気扇が入っていなければ空気交換(窓の開閉による)0.33回/h(3時間で1回)
・熱交換型換気扇 0.5回/h
・工事の精度
・南側の開口部は大きくエネルギーを得て、北の開口部は小さくする・。
・給湯はソーラーパネルによる

性能は
壁30cm断熱しU=0.07~0.10W/㎡・K
屋根46cm断熱でU=0.10~0.12W/㎡・K
基礎はU=0.07~0.1W/㎡・K
窓U=0.70~0.90W/㎡・K(ダブルで1.1、トリプルで0.5~0.9)
気密 max0.6(試験して30分間50Paの圧力をしてロスが0.6以下。隙間があったらそこから気流が入り厚が下がるので)

セールスポイントは
・断熱の厚みは変えられる
・気密に気をつけている
・工場で部材をつくることによる精度の高さ
・コストパフォーマンス
・施工スピード
・パッシブハウスの証明  である。

補足として
土地を買ってパッシブハウスを建てると国からローンの金利補助が出る。
2200~2800ユーロ/㎡(1ユーロ130円として95万円~/坪)
一番小さいもので延べ床50㎡で一般的には130~190㎡
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その後、改修現場の見学。セルロースファイバーは掃除機のような管を穴から入れ、いっぱいになると管の先端が360度回転し上下左右にセルローズを充填できる。
したがって一階の壁一枚の高さにひとつの穴で全体に断熱を吹き込むことができる。
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次にMURAUへ移動し、『KLH社』クロスラミナパネルの訪問。
いくつかのプロジェクトの説明を構造エンジニアのヨハネス氏より受ける。
1)Project Spottlgasse,Vienna
4階建て112世帯の集合住宅。床スラブ、間仕切りがKLHで5.5mのスパンをKLHの壁が支えている。重量をもたせた遮音床、間仕切りも遮音性能を保っている。オーストリアは遮音の規制がある。開口部の穴まで工場であけて、配管及び断熱は現場で行う。
2)Project Kuhlweg,Vienna
床スラブ、間仕切りがKLHで集成材の梁も使っている。床は32~40cmで遮音性が高い。建設費は1100ユーロ/㎡
3)Project Hyttkammarer,Falum
すべて木造。間仕切りはKLHダブルでスウェーデンは遮音の規制が厳しく、オーストリアのプロジェクトより重量をもった床となっている。48dB落とし、かつ周波数帯の規制もある。

KLHの施工はコンクリートスラブにL型金物およびアンカーを先付けし、固定するだけで簡単な施工である。今のところオーストリアでは5階建てまでしか木造は建てられず、それ以上は特別な許可が必要になる。イギリス、スウェーデンはそういった規制がない。
剛性は10階から15階まで大丈夫だろうと推測している。日本でもイタリア国立木材研究所が出資して7階建ての耐震実験も行った。今後、国交省の認定を取りたいと考えている。
素材としてはコンクリートと同じ価格だが、施工速度がコンクリートより速いことが特長である。素材は認証林からで200km以内の林からとった60年から100年の樹齢の木を使用している。製材所から加工工場に入ってくる時点でC24以上の材が90%以上であることが条件である。ただし加工後は交互にはるのでばらつきが多少あっても強いということで機械によるグレーディングは行っていない。国内で輸送可能なパネルの大きさの限界はW2.95m L16.5m。日本に入ってきた場合はコンテナの大きさに合わせて小さくなる。KLH社の外壁は湿式の外断熱工法で吹きつけ仕上げ、サッシは木製にアルミクラッドで木目のシートを外壁側に張って仕上げている。接着の工程は見学できなかったが、加工後のパネルの品質管理に疑問が残る。 藤村
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by noz1969 | 2010-03-25 08:31 | オーストリア・スイス研修
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